第64章
祖母の手は枝みたいに痩せ細っているのに、そのときは篠原霧音の手の甲をぎりっと掴んで離さなかった。驚くほど強い力だった。
「きりちゃん……」
祖母の声は濁っていて、息も少し上がっている。
「あなたはいい子だからね。灯はここ数年ずっと忙しかったでしょう。もし寂しい思いをさせてたとしても、あんまり気に病まないでね」
その言葉を聞きながら、篠原霧音はかすかに口元を引いた。返事はしない。
この五年、何が「寂しい思い」だ。
冷たくされた、なんて生ぬるいものじゃない。
まるで最初からそこにいないものとして扱われてきた。
反射的に手を引き抜きたくなる。けれど、濁っていながらも慈しみに満ちたそ...
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