第65章

笠原灯が戻ってくるのは早かった。

手には保温容器が三つ。病院の近くで評判の店で、持ち帰りにしてきたらしい。

病室に湯気と食べ物の匂いが広がると、あの消毒液のきつい空気が、少しだけ薄まった。

笠原灯は折りたたみのテーブルをベッドの上に広げ、蓋をひとつずつ開けていく。

どれも味つけは薄めで、病人向き。中には、篠原霧音が昔よく好んでいた品まで混ざっていた。

篠原霧音は俯いたまま、外祖母に椀を差し出すようにしてスープをよそった。

「私のことはいいの。自分で食べられるわ」

外祖母はずいぶん顔色がよくなっていて、差し出された匙を押し返しながら、二人を交互に見た。

「あなたたちも食べなさい...

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