第10章

藤原右京はわずかに顔をそらし、二谷夜子の唇が触れる寸前で、するりとそのキスをかわした。狙いは空振り。

「藤原様~」

夜子が拗ねたように甘く呼ぶ。

右京は涼しい顔のまま、鼻で笑うように言った。

「男を誘うことすらできないのか?」

頬がじわりと熱くなる。たしかに得意ではない。けれど、そこまで言われるほどひどくはないはずだ。

――あの夜は、彼のほうが燃えるみたいに激しくて、獣みたいに乱暴で。

「たまに遊びで相手してやるくらいならいい。だが、何度もとなると退屈だ」

右京は上の空で言いながら、夜子の身体を値踏みするように視線を滑らせる。

「自分の顔に自信があるんだろうが、前にも言った...

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