第17章

二谷夜子は少しも慌てない。シャンパンの入ったグラスを、白い指でゆるゆるとなぞりながら――鈴木撫子の怒りに燃えた視線を真正面から受け止め、口元だけをふっと吊り上げた。得意げで、どこか嘲るような笑み。

(ふん。バカな女。ちょろいわね)

藤原右京は周囲と談笑しながらも、視線だけは時おり夜子の方へ流していた。あちらで上演されている『見世物』を、最初から最後まで逃さず眺めるために。

鈴木撫子が去っていく瞬間、二谷夜子の顔に浮かんだ勝ち誇った笑みを、藤原右京ははっきり見た。

記憶の中の、あの無邪気な小さな女の子は――もういない。

今の彼女は、自分を隠す術を知り、男を転がすのも上手い。腹の底が読...

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