第19章

二谷夜子は、むしろひどく落ち着き払っていた。艶のある瞳をゆるく巡らせ、淡々と言う。

「現に、あなたはそうなさらない。江原和直さんと完全に決裂したくないからでしょう。それに――江原家を敵に回す気もない」

正確に言えば、彼が恐れているのは、その背後に控える江原家の巨大な力だ。

藤原右京は鼻で笑った。そこにあるのは、ただ冷えきった薄情さだけ。

「思い上がるな」

言い終えた次の瞬間、彼はぱっと手を離し、二谷夜子の身体を乱暴に突き放した。

もっとも、二谷夜子も警戒していなかったわけではない。藤原右京を怒らせれば、何かしらやり返してくる――そう踏んでいたからこそ、弾かれた瞬間にはもう足腰に力...

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