第46章

二谷夜子は吐き気をこらえ、氷みたいに言い放った。

「謝罪は受け取ったわ。――もう帰って。江原若様」

江原和直は胸の奥がざわついた。後悔と苛立ちがないまぜになる。

周防雨子との縁談は、もう動かしようのない既定路線。けれど二谷夜子に対してだけは――本気で、情が移ってしまっていた。

「夜子。謝るだけじゃなくて、もうひとつ聞きたいことがある」

二谷夜子は眉をひそめる。ぐずぐず引き延ばされるのが、とにかく不快だった。

「……なにを?」

江原和直は、やけに深情けぶった目で彼女を見つめた。

「夜子。この間さ……君は、俺のこと……愛したこと、ある?」

思わず笑いそうになるほど厚かましい。

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