第49章

「んっ――」

 二谷夜子は肝を潰した。悲鳴を上げかけた、その瞬間。もう片方の大きな手が、さらに素早く彼女の口を塞ぐ。喉までせり上がった叫びは、そのまま押し潰された。

 次いで腰をぐいと掴まれる。抗う間もなく、凄まじい力で後方へ引きずられ、あっという間にその場から連れ去られた。

 藤原右京は庭の反対側、より人目につかない物陰まで彼女を引きずっていくと、そのまま容赦なく壁際へ押しつけた。

 長身の身体が覆いかぶさるように迫る。逃げ場などない。彼と壁のあいだに、二谷夜子は完全に閉じ込められた。

 藤原右京は無表情のまま言う。

「見ていて楽しかったか」

 二谷夜子は、藤原右京が周防家の...

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