第64章

天野病院のVIP個室。空気には消毒液の匂いが濃く滲んでいた。

静まり返った室内に響くのは、点滴がぽたり、ぽたりと落ちる音だけ。

「藤原様」

外科の主任医師がソファの前で畏まって頭を下げる。

「二谷さんの傷はすべて処置いたしました。幸い、皮膚の表層の外傷のみです。ただ出血量がやや多かったので、輸液が終わったら数日しっかり静養していただければ問題ありません」

藤原右京は広い革張りのソファに沈み込み、長い脚を組んだまま、まぶたさえ上げない。

細く長い指がタブレットの画面を滑る。

そこに繰り返し流れているのは――二谷夜子が狼狽してトイレへ駆け込む直前の監視映像だった。

主任医師は息を...

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