第5章

 床にレシートが散乱し、健人が立ちはだかっている以上、理紗にはもう逃げ場がなかった。

 警察官が一歩前に出た。手錠がカチャリと鳴る。

「嫌っ――刑務所なんて絶対嫌――お母さん、助けて――お父さん――」マスカラで顔を黒く汚しながら暴れ狂う理紗は、今日一日の中で初めて、彼女の本来の姿をありのままに晒していた。

 義男と静子は揃って青ざめた。三百万円という金額が法的に何を意味するのか、彼らは理解していた。ちょっとしたお灸を据えられる程度で済む話ではないのだ。

 義男が私の前に崩れ落ち、膝をついた。

「結衣。頼む」彼は泣いていた。本当に、顔を涙でぐしゃぐしゃにして。「理紗はお前の従姉妹じゃ...

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