第6章

「お巡りさん、もう一件、被害届を出させてください」

 この四十分間、一つの家族が音を立てて崩壊していくのを黙って見届けていた二人の警察官へと、私は振り返った。

「佐藤義男と佐藤静子。未成年者の財産の不法横領です。現金二千万円と、住宅物件が一つ。正式な捜査をお願いします」

「狂ってる――」義男が床から這い上がるようにして立ち上がった。「その金はもうない! 十年も前のことだぞ。証拠なんてどこにも――」

「佐藤義男さん」健人が眼鏡を押し上げ、最後のファイルを開いた。「座ったままでいた方がいいですよ」

 彼は分厚い書類の束をカウンターの上に置いた。

「これは事故の賠償金口座の、過去十年間...

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