第3章
ちょうどウェイターがカクテルを一杯運んできたところへ、私はほとんど無意識にそれをひったくり、一気に呷った。
「ちょっ、お客様!」
ウェイターが慌てて叫ぶ。
「そちらは、うちのオーナーが自分用に特別に作ったものでして!」
私が反応する間もなく、ウェイターはトレーを放り出すと、浅田駿之介が去っていった方へと走っていった。
アルコールによる熱が、制御不能な炎のように急速に体中へ広がる。めまいがして、周りの照明が明滅し、音もまるで薄い紗を一枚隔てたかのように遠のいていく。
ぼんやりと、自分の置かれた状況を認識した。
「真緒?」
ひやりとした手が、火照った私の顔に当てられ、...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
縮小
拡大
