第8章

ピッ、ピッという穏やかな医療機器の電子音が、ゆっくりと私の意識を現実に引き戻していく。喉は砕けたガラスを飲み込んだかのように痛み、息を吸い込むたびに胸に鋭い痛みが走った。嗅ぎ慣れた消毒液の匂いと、それからもう一つ――良也のコロンの香りが混じり合っていた。

重い瞼をこじ開けようとすると、病院のブラインドから差し込む午後の光が目に染みた。良也がベッドの傍らに座り、私の手の隣で組んだ腕に頭を預けている。彼の姿はひどいものだった。頬はこけ、目の下には濃い隈が浮かび、顎は無精髭に覆われている。

「良也……?」私の声は、かろうじて掠れた音になった。

彼の頭が勢いよく上がった。「美月! ああ、...

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