第1章

星奈視点

午前二時。またしても、私の体は炎に包まれていた。

この忌々しいオメガの体質――毎週、私はこの責め苦に耐えなければならない。布団で体を丸めると、肌は燃え盛る炎に炙られるかのように熱く、着ていた彼氏のTシャツは汗でぐっしょりと濡れていた。布地が肌を掠めるたびに全身に震えが走り、神経が過敏に悲鳴を上げる。

私の恋人、幼馴染でもある佐藤翔太は、ノートパソコンの画面に釘付けで、白石由衣とビデオチャットをしていた。

「だからさ、由衣の市場分析は本当に素晴らしいよ」と翔太が熱弁している。「さすが白石家って感じだ。ビジネスの世界を完璧に理解してる」

「ありがとう、翔太。あなたにそう言ってもらえると、すごく嬉しいわ」スピーカーから由衣の甘ったるい声が媚びるように響く。

吐き気がした。三年も一緒にいるのに、彼が私をそんな風に褒めてくれたことなんて一度もなかった。

「翔太……」か細く、必死に彼の名を呼ぶ声は、欲求に震えていた。「お願い……」

彼は振り返りもせず、苛立ちを顔に滲ませてイヤホンを片方外した。「星奈、静かにしてくれないか。今、大事な話をしてるんだ」

「でも、本当に苦しくて……」

「黙れ!」翔太はくるりと振り返り、その瞳に嫌悪を燃え上がらせた。「お前はいつも最悪のタイミングでヒートに入るんだよな!由衣ならこんな風に俺の邪魔はしない――彼女は俺の優先順位を尊重してくれるからな!」

彼の言葉は、平手打ちのように私を打ちのめした。いつから私は、彼の勉強仲間より下の存在になったのだろう?

唇を噛みしめ、涙をこらえたが、体の苦痛と、彼に拒絶された痛みで、心が張り裂けそうだった。

「ごめん、由衣。彼女がちょっと……問題を抱えててさ」翔太は画面に向かって言った。「図書館の自習室に行こう。そっちの方が静かだから」

「気にしないで、翔太」由衣が明るく言った。「境界線ってものが分からない人っているものね?」

翔太は頷き、もうノートパソコンを片付け始めていた。私には一瞥もくれない。「今夜は戻らない。休むなり……まあ、好きにしろ」

ドアがバタンと閉まり、私は暗闇の中で震えながら泣きじゃくった。

三年間付き合って、その結果が「まあ、好きにしろ」?

涙が頬を伝い、私は翔太の残り香がする枕を抱きしめて慰めを求めた。だが、それは絶望を深めるだけだった。ヒートのせいで肌の隅々までが触れ合いを求めて痛み、正気の淵へと追いやられていく。

もうダメだと思った、その時。ドアが軋む音を立てて開いた。

「翔太?」私は望みを託して顔を上げた。

「大丈夫?」深く、惹きつけられるような声がして、朝田航平が中に入ってきた。

翔太のルームメイトで、野球部のスターピッチャー。彼とはすれ違いに会釈を交わす程度の間柄で――いつもよそよそしくて、クールな人だった。練習帰りなのか、タイトな運動着が彫刻のような体に張り付き、月明かりの下で日に焼けた肌に汗が光っていた。

「ごめん、泣いてる声が聞こえたけど……」彼の瞳に戸惑いがよぎる。明らかに場違いな状況にどうしていいか分からないようだ。「またヒートか?翔太はどこだ?」

私たちはろくに話したこともないのに、こんな……ボロボロで無防備な姿を見られてしまうなんて。羞恥で体が燃えるようだった。

「図書館にいるの。白石さんと、課題を……」涙を拭い、彼の視線を避けてつぶやいた。「私が……邪魔だって」

航平の拳が固く握られた。「あの野郎……」

「彼のことをそんな風に言わないで……」

「山本さん、あいつを庇うのはやめましょう!」航平の声は怒りで鋭かった。「俺にだって目はある!あいつが君をどう扱ってるか、ずっと見てるんだぞ!」

彼は一歩近づいた。汗と、生々しい男らしさの混じった彼の匂いが、麻薬のように私を襲う。思わずそれを吸い込んでしまい、理性が飛びそうになった。

「君はこんな扱いを受けるべきじゃない」彼はベッドの縁で立ち止まり、私を見下ろした。

その角度からだと、濡れた運動着の下で上下する彼の胸や、何時間ものトレーニングで刻まれた硬質な筋肉のラインが見えた。

『ああ、もう、ダメかも』

「航平くん……」私の体は、本能的に彼の方へ動いていた。

「震えてるな」彼は手を伸ばし、一瞬ためらってから、私の額に触れた。

そのたった一度の接触が、私の中に電撃を走らせ、全身をわななかせた。

「綺麗だな、星……星奈さん」航平はそう言うと、荒々しい声で私と視線を絡ませた。「どんな男だって君と付き合えたら幸運だよ」

もう、我慢できなかった。私は彼の手を掴み、その手首に顔を埋め、彼の匂いをもっと欲しがるように擦り寄せた。

「星奈……」彼の体が強張る。

彼を見上げ、私は無謀なことをした――キスをしたのだ。

それは、切羽詰まった欲求に突き動かされた、生々しいキスだった。彼を貪るように、舌を絡ませ、その口内の熱を味わった。

航平は一瞬固まったが、すぐに翔太の気のないキスとは全く違う飢えで応えてきた。彼の唇は荒々しく、求め、私を喰らい尽くすようだった。

「あなたが欲しい」私は彼の耳元で喘いだ。「お願い……おかしくなりそう……」

身を起こすと、ぶかぶかのTシャツが肩から滑り落ちた。月明かりが私の裸の肌に注がれ、彼の瞳が欲望に黒く染まるのが見えた。

「星奈……」彼の声は震えていた。もはや失われつつある自制心との戦いだ。

「彼はもう私を求めてない」私はそう言ってTシャツを完全に脱ぎ捨て、彼に身を晒した。「どうして私が貞淑でいなくちゃいけないの?」

航平の理性が、ぷつりと切れた。彼は私を翔太のベッドに押し倒した。

「本当にいいのか?」彼は最後の確認をするように尋ねた。

「ええ」私は彼の服を引っ張りながら言った。「私を抱いて。何もかも忘れさせて……」

彼は運動着を引き裂くように脱ぎ捨て、引き締まった筋肉と日に焼けた肌を露わにした。私は彼の胸の汗を舐めとった。そのしょっぱい味が、私をさらに狂わせる。

航平の逞しい手が私の熱を帯びた肌を優しく彷徨い、全身の感覚が目覚めていく。オメガの発情期特有の甘い香りと彼のアルファの匂いが混ざり合い、部屋の空気は次第に濃密さを増していった。彼の唇が私のそれに重なり、深く、切なく、互いの吐息が溶け合うように絡み合っていく。

私は彼の背中を掻きむしり、爪がその硬い筋肉に食い込む。彼の生の力を感じた。熱が、太腿の間に溜まっていく。

「星奈」彼は少し身を引いて、唸るように言った。「好きだ」

その言葉が、私の体の奥深くを熱く燃え上がらせた。震える指で自分の下着に手をかけると、航平がそっと私の手を止め、代わりに彼の手で優しく下着を滑り落とした。月明かりに照らされた彼の顔には、抑えきれない欲望が浮かんでいる。

私が恐る恐る手を伸ばすと、彼の硬く熱を帯びた部分に触れた。思わず喉から小さな嗚咽が漏れる。航平は息を呑み、瞳に情熱を宿して私を見つめた。私の指の下で彼の肌は焼けつくように熱く、脈打っている。ゆっくりと、そっと手を動かすと、彼の喉から低い吐息が漏れた。

「くっ……」航平は低く呻き、頭を後ろに反らした。首筋の筋肉が浮き上がり、月明かりに影を落とす。「君のせいで、俺、自分を見失いそうだ……」

「お願い」私は囁き、焦るように脚を開いた。

彼は躊躇しなかった。その手が私の腰を掴み、その場に縫い付ける。彼の先端が、私の興奮で濡れた入り口を掠め、その接触に私は息を呑んだ。彼は焦らすように、私の敏感な場所を滑らせ、そのたびに全身に震えが走った。

「俺が欲しいと言え」彼は低い声で命じた。

「あなたが欲しい」私は喘ぎ、彼の肩を掴んだ。「航平くん、私を抱いて」

獣のような唸り声を上げ、彼は私の中に突き入った。完全に、満たされた。

「あ、ああッ!」圧倒的な感覚に体が強張り、私は叫び声を上げた。

航平は動きを止め、私が慣れるのを待って、額を私の額に押し付けた。「大丈夫か?」

「続けて」私は彼にもっと深く入ってほしいと腰を揺すり、懇願した。「止めないで」

彼はほとんど完全に引き抜いてから、再び激しく突き入れた。そのリズムは容赦ない。突き上げるたびに私は絶頂へと近づき、私たちの体は濡れたリズミカルな音を立ててぶつかり合った。私の手は彼の汗ばんだ胸をさまよい、指は硬い腹筋をなぞり、彼の腰を掴んで、もっと激しく、もっと速く、と引き寄せた。

「星奈」彼は唸り、私の首筋にキスをし、強く吸った。

最高に、気持ちよかった。

彼の指が私たちの間に滑り込み、親指が私の敏感な場所をなぞった。「今、俺と一緒に……感じて」

その言葉が、私を粉々にした。絶頂が津波のように襲いかかり、快楽が私を突き抜ける中、体は彼の周りで収縮した。

「航平……ああ……」

彼は奥深くに身を埋め、私の中で解放した。その熱が、震える体に余韻を走らせる。

航平は私を近くに引き寄せた。私の頬は彼の胸に押し付けられ、彼の心臓の鼓動が私に響く。その夜、私のヒートはついに収まり、体は満たされた。

「星奈」彼は囁き、唇が私の額を掠めた。「君はもう、俺のものだ」

私は答えなかった。恍惚の余韻に、ただ身を委ねていた。

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