第5章

翌日、私は城崎霖の家に引っ越した。

ここら辺は物騒だし、新しい部屋が見つかるまでは俺のところにいろ、と彼が言ったからだ。

なんだか、十八歳の頃に戻ったような感じ。

あの年、私は兄が修士課程に通う大学に合格した。

寮生活が肌に合わなかった私のため、兄は学外にアパートを借り、二人で暮らし始めたのだ。

実のところ、当時も身の回りの世話をしてくれるのは彼の方だった。朝食の調達も、洗濯も、掃除もすべて彼。私はただ無邪気に甘えているだけで、兄は私のために何でもしてくれた。

ある時、私が風邪で三十九度を超える高熱を出したことがある。

兄は目が回るほど忙しかったはずなのに、私のためにすべての実...

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