第32章

「ほかの人は?」と小島奈緒が尋ねた。

「今日はお前の貸し切りだよ」風間怜司が狡猾そうに笑う。

ぴたりと身体に張りつく、丸首のタイトなスポーツTシャツ。柔らかく伸びる生地が、汗を逃がしながらも輪郭を隠さない。鍛え抜かれた体には無駄がなく、筋肉は引き締まり、野性味すら漂っていた。

笑い終えると、怜司は一歩、距離を詰める。むっとするほどの男の熱が、正面から押し寄せた。

奈緒は思わず息を止める。

――ずるい。

風間怜司という男は、ほんとうにずるい。何と言えばいいのか、言葉が見つからない。

「いいか、ボクシング部で女はお前ひとりだ」怜司は腕を組み、もっともらしく言い放つ。「みんなに囲まれ...

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