第35章

風間怜司の体内でうごめいていた――意地の悪い衝動や、からかってやろうという悪だくみは、小島奈緒の澄みきった、汚れのない眼差しにさらされると、どういうわけかことごとく形にならなかった。

 彼は奥歯をぎり、と噛みしめ、悔しそうに吐き捨てる。

「この数日、ずっとお前のことばっか考えてた。昼は付き合いで潰れて、夜は夜でお前のトレーニングメニュー作って。電話しても出ねぇ、メッセも返さねぇ……いい度胸してんな」

 小島奈緒は慌てて言い訳する。

「電話は、バイト中は出られないの。気づいたときには遅かったし。メッセージは返したよ」

「返した?」風間怜司は鼻を鳴らした。「翌日に返すのも『返した』って...

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