第53章

渡辺東は、火曜日になっても結局、授業に顔を出さなかった。

月曜の夜の一件は、二つどころか複数のサークルの学生に目撃されていた。あの焼き鳥屋には、別のテーブルにもH大の学生がいて、さらにぽつぽつとした客の中にもH大の人間が混じっていた。そもそも、あの店はH大相手の商売で成り立っているような店だ。

要するに、目撃者が多すぎた。

だから火曜日には、もう小さな範囲で噂が回り始めていた。中心はもちろん、小島奈緒たちのクラス。

朝イチで、小島奈緒は井上小夜と白岡瑠奈に腕を引かれ、教室の隅へ連れていかれた。二人は声を潜めて聞いてくる。

「ねえ、聞いた? 昨日の夜、風間怜司が斎藤雅美のために渡辺東...

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