第60章

「いくらですか?」小島奈緒は財布をつまんだまま尋ねた。

店員がレジをパチパチと叩く。

「合計で5万になります」

小島奈緒は、今にも動きそうな風間怜司の腕を押さえた。

「あなたは動かないで。私が払うから」

彼女は現金を取り出した。

馬田さんに、会計は振り込みか現金かと聞かれたとき、小島奈緒は迷わず現金を選んだ。

だから撮影を1本終えるたび、すぐに手元にお金が入る。――この「今すぐもらえる」感じが、たまらなく嬉しい。

自分で稼いだお金で、堂々と支払いができるのは、もっと嬉しい。

前の人生では、何かを買うたびに罪悪感がつきまとった。お婆さんのことは削れない。だから自分だけを削った...

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