第85章

帰りの車中、小島奈緒が言った。

「明日から、学校に戻りたい」

風間怜司は即座に頷く。

「いい」

奈緒は、早く日常に戻ったほうがいい。そう思った。

少し間を置いて、奈緒が続ける。

「……寮、申請しようかなって」

風間怜司は考えるより先に切り捨てた。

「ダメだ」

H大の教職員住宅の部屋は、もう住める状態じゃない。住むなら全面的に手を入れ直すしかない。

そもそもあの部屋は、孫と離れずに通学するお婆さんを受け入れるために、大学側が特別に用意したものだ。お婆さんが亡くなった以上、学校がこのまま使わせてくれるとも思えない。

小島奈緒は、居場所を失った。

寮を考えるのは自然だ。けれ...

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