第196章

「手当ては無用だ。……別に使い道がある」

霧生嵐は足を動かした。その冷徹な響きの中に、ごく僅かな、だが確かな優しさが滲んでいた。

神代雪璃は彼のアキレス腱あたりを力任せに押さえ込むと、腹立ち紛れか、あるいは単なる手元も狂いか、アルコールをたっぷり含ませた二本の綿棒を傷口に容赦なく押し当てた。

傷口を焼くような激痛が走り、霧生嵐の額に脂汗が浮く。だが、その瞳の奥には笑意が揺らめいていた。

彼女がこうして我儘をぶつけてくるのは、随分と久しぶりのことだった。

「別の使い道、とおっしゃるなら、今後ナイフでどこを切り刻もうと知ったことではありません。ですが、今回は駄目です。あなたに借りは作り...

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