第216章

霧生嵐は苦痛を堪えて辛うじて跪いた姿勢を保ち、何事もなかったかのように口元の血を拭った。まるで、今しがた殴られたのは自分ではないとでも言うような平然とした態度だ。

霧生の老人は彼に向かって重々しく鼻を鳴らすと、山下を呼びつけ、共に去っていった。

「そこで座っていて」

神代雪璃は彼を支えてソファに座らせると、小走りで二階へと駆け上がった。

階段の途中で足を滑らせ、危うく転げ落ちそうになったが、彼女は立ち止まることさえせず、そのまま上階へと急ぐ。

霧生嵐はその遠ざかる背中を見送り、微かに口角を上げた。だが、その動作が傷口に障ったのか、わずかに眉を顰める。

しばらくして、神代雪璃が救急...

ログインして続きを読む