第70章

電話はスピーカーにしてあって、車内にははっきりと声が響いていた。

夏川清美の言葉が途切れるより早く、小野寺允樹が反射的にこちらを見てくる。

私は何食わぬ顔で視線を窓の外へ逃がした。彼の視界から外れた瞬間、口元がどうしても緩む。――さて、この金の話を、彼女はどう落とすつもりだろう。

「金がないのか? いくら要る」

小野寺允樹がすぐに受けた。

「……たぶん、ちょっと多いかも」清美の声はためらいがちだ。「允樹兄さん……助けてくれるの、兄さんしかいないの。お願い、理由は聞かないで。出せるかどうかだけ、教えて?」

心配が滲む声で、允樹が言う。

「金は出せる。ただ、何があったのか知りたい。...

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