第72章

見学を終えたあとも、小野寺允樹は変わらず車で私を工場まで送ってくれた。私は何気ない調子で切り出す。

「夏川さん、あの人の口座番号、送ってきました? あなたのほうで動きにくいなら、私が手伝えるかもしれない」

小野寺允樹が目を丸くして、私を見た。

「え……手伝って、くれるんですか?」

私は首を少し傾け、ふっと軽く笑う。

「変な先入観はやめて。私はただ助けたいだけ。正直、経理を通して帳尻合わせなんて、バレたら大事にも小事にもなる。取締役会だって飾りじゃないし、そんなことであなたにリスクを背負ってほしくないの」

小野寺允樹の顔に、感動と、それ以上の信じられなさが浮かぶ。彼は私の表情を確か...

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