第8章

声のしたほうへ視線を向ける。左手の席に、灰色のスーツ姿の男が腰を下ろしていた。切れ長の目。笑みを湛えた眼差しと、生まれつき微笑んでいるような唇。高く通った鼻梁には縁なし眼鏡。全体がやけに上品で、穏やかな雰囲気をまとっている。

これだけ整った顔に無害そうな笑顔まで添えられたら、多くの人は見落としてしまうだろう。――その瞳の奥に、きらりと走る鋭い光を。

彼の視線の先を追って向かいを見ると、榎本槙野が意地の悪い目でこちらを睨みつけていた。弄ばれた怒りがそのまま滲んだ眼。濃い眉がきつく寄っている。

「小野寺礼臣……てめぇ、わざとだろ?」

ようやく気づいたのだ。榎本槙野が4億を叩いた時点で、小...

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