第9章

私は屋敷の客間に通された。幅の広いベッドには分厚いマットレスが敷かれ、ふかふかの寝具が整えられている。横になって目を閉じた瞬間、ようやく実感が追いついた。――生き延びたんだ、と。

結婚式の日から今日まで、まともに眠れた覚えがない。毎晩、違う種類の悪夢に追い回され、未来には底なしの恐怖しかなかった。でも今夜は……きっと、静かに眠れる。

6億の流動資金を抜かれれば、夏川家には相当な痛手になる。とはいえ、夏川グループが即座に倒産するほどじゃない。少なくとも、今の小野寺家と夏川家の蜜月の関係なら、どちらかが沈めばもう一方も傷を負う。夏川グループの破綻など、許すはずがない。

私はただ、小さな「お...

ログインして続きを読む