第89章 バレた

冬木澪は上着を羽織り、足音を殺して二階の階段口まで出た。

見下ろした瞬間、ちょうど高瀬梅子がキッチンから出てくるところにぶつかる。

濃い色のパジャマ。髪は梳かれておらず、ぐしゃぐしゃのまま頬に張りついている。手には白磁の椀。縁には褐色の滓が少しこびりついていた。

「井上さん。これ、橋本日奈さんに持って行って」

高瀬梅子の声はぐっと低い。気づかないふりをしても隠しきれない震えが混じっていた。

「……わざわざ日奈さんのために煮た、安胎のスープだって言って」

井上さんは椀を受け取り、眉間に皺を寄せる。

「奥様、なんだか匂いが変ですけど……何を入れたんです?」

「何も」

高瀬梅子は...

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