第97章 探り

新しい朝。冬木澪はまだ早い時間に藤堂グループへ向かった。

後方支援部門のフロアに足を踏み入れた瞬間、焦げたようなコーヒーの香りが鼻先を打つ。

カタカタと続いていたキーボード音が、ぴたりと止まった。

十数人ぶんの視線が一斉に飛んでくる。珍しい動物でも見つけたみたいに、彼女を値踏みする目。

「冬木部長?」

若い事務員が耐えきれず、手にしていたホチキスを「ぱたん」と床に落とした。

「……どうしてこちらに?」

冬木澪は答えない。人だかりの向こう、給湯スペースの入口へ視線を通した。

藤堂涼太が背を向けたまま、コーヒー豆を挽いている。

銀灰色のシャツは肘までまくり上げられ、露出した前腕...

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