第5章

由美視点

防音室は狭い。壁は吸音フォームで覆われている。調整可能なアームに取り付けられたマイクが二本。私と悠はヘッドフォンをつけ、向かい合って座っている。隅では、赤い録音ランプが静かに光っていた。

悠がマイクに身を乗り出す。「『深海探訪シリーズ』へようこそ。本日のゲストは、加藤由美さんです。あなたのAI企業は先日、シリーズCの資金調達を完了し、評価額は120億ドルに達しました。加藤さん、離婚からここまで、二年足らず。振り返ってみて、後悔はありますか?」

私は数秒、その問いを宙に漂わせた。

「痛み? ええ。後悔? いいえ」

悠は頷く。

「詳しくお聞かせいただけますか?」

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