第5章

絵里視点

私はかつての書斎で和也の隣に漂いながら、彼がスマホを武器のように握りしめているのを見ていた。彼との最後の数ヶ月の記憶が、屈辱と苦痛の津波となって私に押し寄せる。

あの爆発が起こったのは、私が死ぬ六週間前の火曜日の夜、私たちの書斎でのことだった。

私が残業でカルテの整理をしていると、何かに取り憑かれたように和也が診察室のドアを蹴破らんばかりの勢いで開けた。顔を紅潮させ、軍人らしい冷静さは見る影もなかった。

「もう耐えられない!」彼は壁にかけてあった結婚式の写真が落ちるほど激しくドアを叩きつけ、叫んだ。

私は驚いてデスクから顔を上げた。「耐えられないって、何を?どうし...

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