第8章

絵里視点

午後十一時の『戦士の避難所』リハビリセンターは、いつもと違う顔をしていた。非常灯が、人のいない廊下に、非常灯だけが不気味な影を落としている。私は、裏口から忍び込んできた和也の後に続いた。

彼は中村大佐と別れてから何時間も運転し続けてきたのだろう、ハンドルを握る指の関節は白くなっていた。今の彼は何かに憑かれたように動き、私が知らなかったマスターキーの束を取り出した。

(計画的だったのね。私の職場に押し入る準備までしてくるなんて)

資料室のドアがカチリと音を立てて開く。和也は中へ足を踏み入れた。

メイン端末の電源を入れる彼の指は震えていた。

「沙耶香、君に本当は何が...

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