第104章

久世哲哉は御影家の門前に立っていた。疲弊するほどの出来事に叩きのめされてきたはずなのに、黒いシャツを無造作に着崩し、襟元は乱れ、袖は肘まで捲り上げられている。その濃い色が、かえって彼の気配を凛と澄ませていた。

十月の冷たい風が、頬を掠める。

腕に掛けていたキャメル色のカシミヤコートを肩へと掛け直し、表情の読めないまま門衛と視線を合わせる。雪を含んだような冷淡さと、どこか傲然とした光。

どれほどみじめな状況に置かれていようと――。

彼の身には、生まれつきの自信が残っている。久世家で甘やかされて育ったがゆえの優越、そして才能と実力が裏打ちする揺るぎない底力。

御影家の護衛が、その気配に...

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