第129章

前川美里は、生まれつき冷ややかな艶をまとっていた。雪のように白い肌に、いっけん淡白に見えて、実は澄んだ華やかさを秘めた顔立ち。近寄りがたい「クール系の姉御」とでも呼ぶべき雰囲気だ。

白衣がその印象に拍車をかける。職業人としての理知と冷徹さ――そんな色が、彼女の全身から立ち上っていた。身長は176。すらりと高い体躯に、通った鼻梁。そこへ金縁の眼鏡が乗るだけで、鋭さが増す。

けれど。

彼女が酒井初音の前に立った瞬間、表情の角がふっとほどけた。厳粛な「プロの顔」が、あっさり崩れる。

「美里、もう私、結婚したんだよ」

「だから、むやみにチューしちゃダメ」

初音は小首をかしげ、前川美里の不...

ログインして続きを読む