第150章

たった一言が、久世直哉の胸の底に沈んでいた憎悪へ火を点けた。

酒井初音が久世家へ戻ってからというもの、直哉は脚の持病もあって、五人の兄の中でもいちばん物腰が柔らかい。だからこそ、初音と最も親しかった兄でもある。

久世家の中で「公平」を貫いていたのも、直哉だった。

酒井初音にせよ久世美月にせよ、誰かに贈り物をする時は、必ず同じものを同じように用意する。露骨なえこひいきは、決してしない。

初音は五人の兄全員に気を配っていたが、直哉に対しては、そこにさらに一段、丁寧さが重なった。

直哉と初音の距離は特別だった。二人でいる時、初音が自ら手を添えて車椅子を押すことさえあった。直哉は障害を負っ...

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