第154章

酒井正志はその場に立ち尽くしたまま、酒井初音に背を向け、苛立ちを隠しもせず眉をひそめていた。いまにも奥山正行を殴り飛ばしてやりたい。

こいつは知っているはずだ。YN薬粧ブランドの工場建設が、いま初音の担当している案件だってことを。

引き受けるだけならまだしも、わざわざ自分までこの泥沼に引きずり込むなんて。

殴られて当然だ。

今回、帝都に戻ってきていちばん関わりたくなかった相手――それが酒井初音だった。

嫌いだ。

大嫌いだ。

もし四年前、……買いたかったんだ。自分の、あのパソコンを。だから――錆びた折れ釘が骨に食い込む痛みを両脚で耐えながら、彼女に会いに行ったりしなければ。

脚...

ログインして続きを読む