第181章

リング上。

酒井初音は、観客の張りつめた空気も、野次馬じみた興奮も、まるで視界に入っていない。

いま、キャメルが邪悪な笑みを貼りつけたまま彼女をねめつけていた。獲物を狙う飢えた狼――そんな目だ。

体格差は歴然だった。初音の身体は細く、華奢で、キャメルが拳を一発叩き込めば、それだけで終わってしまいそうに見える。

「おい、小娘。いま降参して、しゃがんで犬みてぇに鳴けば見逃してやる。だが逆らうなら――その細っこい身体、俺の一発でミンチだぞ」

キャメルが豪語する。

豪語できるだけの実績もあるのだろう。だが初音は、好きに言わせておいた。冷えた眼差しで彼を一瞥し、淡々と――相手の癖と間合いを...

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