第184章

酒井初音の視線は、ほとんど反射みたいに久世直哉の車椅子へ一瞬だけ落ちた。

なぜだろう。生まれ変わってから、彼が車椅子に座っている姿を見ても、眉ひとつ動かす気にならなかったのに。

なのに今は――あの一台が視界に入るだけで、胸の奥がざわついて、気分が悪い。

その不快感に、初音は思わず眉を寄せる。

けれど今は、正志の怪我のほうが先だ。初音は駆けるようにその場を離れた。

ただ扉を抜ける直前、振り返って三村俊輔に低く言い置く。

「三村俊輔。久世直哉と主催側の関係、洗って。裏で取引があるかどうかも」

「……ああ、“そういう”取引だ」

三村正明の仕事ぶりは、結局のところ兄ほど容赦がないわけ...

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