第29章

ここ数日、酒井初音は九行秘針で御影怜司に鍼を打っていた。

効果は、たしかに上がっている。

けれど彼女は――稼ぐことを最優先にする姿勢だけは、忘れていなかった。

前世の経験が、彼女の骨の髄にまで染みついた劣等感を育てた。血の繋がりなど当てにならない。恋情は、底なしの淵かもしれない。

自分が強くなるしかない。そうして初めて、運命を握れる。

「御影社長、大変です!」

「奥様が裏庭の高額な観葉植物を全部掘り返して……名前も分からない雑草みたいなのを山ほど植えました。いま、そこで水やりしてます!」

三村正明は額の汗を拭った。ズボンの裾には泥がべったり付いている。

本当はもう一つ告げ口し...

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