第32章

久世の祖父は歩みこそ遅い。だが一歩ごとに、場の空気を押し潰すような威圧がまとわりついていた。

久世の祖母が顔色を変える。

「おじいさま、何をおっしゃるのですか」

「うちの孫娘だ。手のひらに乗せて可愛がるに決まっておる」

彼女は、酒井初音という存在を一度も本気で認めたことがない。

久世美月が持つ「福の星」の命格。なにより長い年月、傍で寄り添ってきた事実。それだけで、初音への罪悪感など相殺できる――祖母にとっては、そういう理屈だった。

酒井初音が十数年も外で流れたのは、たしかに気の毒だ。

だが初音が戻ってきたせいで、美月が本来受け取るはずだったものの半分を差し出さねばならなくなった...

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