第38章

酒井初音は気だるげに指先を絡めて揶揄う。相手が表情の上では露骨に拒んでいるのを感じ取っていながら。

――それでも、もう片方の手。彼女の指を揉みほぐす動きだけは、一度も止まらない。

ちっ……なに、私のこと心配してんの?

暗がりで。

一ノ瀬玉緒が暗視ゴーグルを外し、低く呟いた。

「……あの女、何者だよ。怜司が誰かにあんなふうに懐いて、しかも大人しく従うの、見たことねぇ」

「男にも女にも、だぞ!」

従順すぎて、むしろ怖い。

かつての御影怜司といえば、冷酷で容赦がない。ビジネスの場では決断も手口も苛烈で、身内の兄弟にすら基本は塩対応――それが当たり前だった。

「いや、でもさ……お前...

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