第56章

一方そのころ、久世湊は一ノ瀬玲奈に殴られて鼻も頬も腫れ上がった久世美月を姫抱きにし、そのまま会場を出ようとしていた。

か弱い少女は兄の腕の中で小さく身を丸め、さっきまでの傲慢さは影もない。瞳の奥には黒い翳りが落ち、胸の内には濃い不甘が絡みついていた。

だが、行く手を三村正明と三村俊輔が塞ぐ。

久世湊の眉間が険しく歪む。

「どけ!!」

「何のつもりだ」

「三村正明。ここは金融サミットだぞ。御影家の庭じゃねぇ」

久世湊は三村正明を見たことがある。御影怜司の腹心――止める理由など一つしかない。酒井初音の鬱憤晴らし、その続きだ。

美月がここまで傷だらけになっているのに、まだ追い詰める...

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