第79章

久世美月は、もう後がなかった。久世湊が手配した高級ピアノが、法廷の会場へ運び込まれるのを、腹を括って待つしかない。

本来、裁判所がこんな「演奏」みたいな演出に付き合うことはない。

だが今回は公開審理で、目的の一つに「文化創作を通じた法教育の啓発」が掲げられていた。

傍聴人もいる。配信もある。

そして何より――「本物の創作者」が「盗作側」を実力で叩き潰せるのなら、むしろ見栄えがいい。関係者としても、悪い話ではなかった。

とりわけ裁判官の隣に座る音律・譜面鑑定の専門家は、編曲された『夜桜眠らず』に目を通した瞬間から、編曲者そのものに強い関心を抱いていた。

『夜桜眠らず』は、百年前に世...

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