第32章

星野結花は、今この場でこのぶりっ子を引き裂いてやりたい衝動に駆られた。

――けれど、だめだ。

新山玖はもう我慢の限界だった。マーチンブーツで数歩、ずかずかと進むと、すれ違った給仕のトレーから赤ワインのボトルをひったくり、星野結花の前まで来るなり、有無を言わさず村井麻実の頭上に傾けた。

とぷ、とぷ、と赤い液体が髪を伝い、肩からドレスへ落ちていく。

「どんだけ高いミルクだったと思ってんの? あぁ?」

新山玖は憎々しげに村井麻実を睨みつけた。

「星野結花があんたを叩けないなら、私なら叩けるってこと。人をいじめたくせに、赤ワインまで飲ませてもらって……感謝しなよ?」

そう吐き捨てると、...

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