第70章

星月ヶ浜の夜は、たしかに幸福だった。けれど、池田琉生と村井麻実が暮らす「グランヴィラ」には、そんな甘い空気は一滴も残っていない。

村井麻実は、いかにも理解あるふうな顔で池田琉生を見つめた。

「琉生兄さん、ゲームなんて遊びでしょ。このモード、まだ慣れてないんだし……負けたって別にいいじゃない」

「お前が欲しがってた、あれ……」

「言ったでしょ、ただの装備だって」麻実は優しく言い聞かせるように続ける。「ほら、そんな顔しないで。機嫌直して?」

「……ああ」

琉生の顔色は、どう見てもよくない。

「はぁ~、私も長いことやってたら眠くなっちゃった」麻実は伸びをしながら、わざとらしく欠伸をし...

ログインして続きを読む