第4章

若菜視点

裁判所での一件の翌日、私は仕事を辞めた。スーツケース二つを抱えて現れた私を見るなり、友人の水原早苗はドアを開け、無言で私を中に引き入れた。それから私はそこに厄介になることになった。

最初の週は、ほとんど客室から出なかった。勇人の写真を握りしめては、喉が焼けつくほど泣き続けた。早苗が隠そうとしていたお酒が、いつも私のそばにあった。世界の輪郭がぼやけるまで、勇人が『もうお母さんなんていらない』と言ったときの顔を忘れられるくらいまで、私は飲み続けた。

「あの子、私が虐待したって言ったの」とある夜、ふらつきながら早苗の台所に入り込み、私は呂律の回らない口で言った。「一度だって、叩いたことなんてないのに、早苗。部屋に閉じ込めたことも、一度も――」

「わかってる」早苗は私の手からビールを取り上げ、カウンターに置いた。「あなたがそんなこと何一つしていないって、わかってるわ」

「じゃあ、どうしてあの子はそんなことを言うの?」私の声はひび割れ、砕け散った。「どうして自分の息子が、裁判官の前で、あんなに大勢の人の前で、私の嘘をつくの――」

「若菜」彼女は私の肩を強く掴んだ。「もうこんなこと続けちゃだめ。こんなの生きてるって言えない。ただ私の客室でゆっくり死んでいってるだけだよ」

「死にたいのかも。もう何の意味もないじゃない」

「意味ならある。あなたは毎晩酒に溺れるより、もっとマシな人生を送る資格があるわ」早苗の握る力が強まる。「佐藤翔太よりも、勇人があなたにしたことよりも、完全に諦めてしまうことよりも、ずっといい人生を」

振りほどこうとしたが、彼女は離してくれなかった。

「絵画教室を経営している友達がいるの」と彼女は続けた。「絵画の指導者が必要なんだって。若菜、あなたはアニメーターだったじゃない。才能がある。こういうのは得意でしょ。面接、手配させて」

「無理よ」首を振ると、部屋がぐらりと傾いた。「もう何もできない。私、壊れちゃったの、早苗。完全に――」

「その面接に行くのよ」早苗の声が鋭くなった。「シャワーを浴びて、きれいな服を着て、そして、やってみるの。ただ、やってみるだけでいい。私が頼んでるのは、それだけ」

「早苗――」

「やってみるだけでいいから」

三日後、私は早苗に半ば引きずられるようにして絵画教室へ向かった。シャワーを浴び、きれいな服も着た。けれど心の中は、スプーンで中身をえぐり出されたように空っぽで、かつて私を私たらしめていたものが、何もかもなくなってしまったようだった。

生徒たちの作品が、壁という壁を埋め尽くしていた。明るく、雑然としていて、生命力に満ち溢れている。それを見ると胸が痛んだ。オーナーは五十代くらいの男性で、爪の甘皮には絵の具が永遠に染み付いているようだった。彼は私のポートフォリオをめくりながら、次第に興味を深めていく様子だった。

「宮本先生、あなたの作品は素晴らしいですね」と彼は言い、純粋な熱意を込めた目で私を見上げた。「あなたのようなプロの経歴を持つ方に来ていただけたら、うちは幸運です。いつから始められますか?」

「来週からでは?」

「完璧です」

初日、私は笑顔を作るようにプログラムされたロボットのように、ただ決められた動きをこなした。絵の具の道具を準備し、イーゼルをきれいに並べ、子供を預けに来る親たちに微笑みかけた。

その時、一人の小さな女の子が私の実演用の絵に歩み寄ってきた。基本的なテクニックを見せるために私が描いただけの、単純な風景画だ。

「わあ」と彼女は感嘆の声を漏らした。「すっごくきれい!」

私は振り返った。六歳にもならないだろうその子は、黒い巻き毛をおさげ髪にしていて、その瞳は純粋な驚きで輝いていた。

「ありがとう」と、私は何とか言った。

「これ、ほんとに先生が描いたの?」彼女はさらに近づき、細部をもっとよく見ようと爪先立ちになった。「どうやって描くのか教えてくれる? お願い。私も描けるようになりたい」

私は微笑んだ。「もちろん、教えてあげるわ」

彼女の名前は花子ちゃんといった。私の隣のイーゼルに座ると、慎重に色を混ぜながら、集中して舌をぺろりと出した。彼女は百万もの質問をした。どうして青と黄色で緑になるの? 雲をぼこぼこじゃなくてふわふわに見せるにはどう描くの? 私の風景画にあるみたいな花を描いてみてもいい?

私は一つ一つの質問に答えた。そして、ゆっくりと、自分でもほとんど気づかないうちに、私の中の何かが解け始めていた。

「花子!」授業が終わり、戸口から男性の声がした。「帰る準備できたか?」

花子ちゃんはイーゼルから飛び上がると、まだ濡れている絵を両手で掴んだ。「お父さん、見て、私が作ったの!」

彼は三十代前半くらいで、シンプルなボタンダウンシャツとジーンズを身につけていた。娘に微笑みかけると目尻に皺が寄り、そして私の方を見たときも、その温かい表情は消えることがなかった。

「新しい指導者の先生ですね」と彼は言い、手を差し出しながら歩み寄ってきた。「神谷健二です。今日は花子を教えてくださって、ありがとうございます」

「宮本若菜です。花子ちゃんはとても才能がありますよ」

「本当ですか?」健二さんは娘に視線を落としたが、花子ちゃんはすでに彼の袖をぐいぐいと引っ張っていた。

「私、先生のこと好き」と花子ちゃんは、六歳児ならではの絶対的な確信を込めて宣言した。「すっごく優しくて、私が失敗しても怒らないもん」

胸の内に、温かい何かが灯った。

それからの数週間で、私は彼らの話を少しずつ知ることになった。健二さんはシングルファザーで、花子ちゃんがまだ一歳にもならない頃からずっとそうだという。彼女の母親は、どこかのバーでの酔った勢いの一夜限りの関係で妊娠し、それが正しいことのように思えて結婚したものの、一年も経たないうちに二人を捨てて、海外に住む元カレのもとへ行ってしまったそうだ。

「彼女から連絡は?」と私はある日の午後、健二さんが花子ちゃんを迎えに早く来て、私が絵筆を洗っているのを見つけたときに尋ねた。

「クリスマスカードはたまに。誕生日プレゼントは、彼女が覚えていれば」彼は大したことではないというように肩をすくめたが、その肩には緊張が走っているのが見て取れた。「でも、彼女が選んだ道ですから」

少なくとも、この子の父親は彼女を選んだのだ、と私は思った。彼に顔を見られないように、そっと背を向けなければならなかった。

「健二さんはいいお父さんですね」と私は静かに言った。絵筆から青い絵の具を洗い流すことに、必死に集中しながら。

やっと顔を上げると、健二さんと目が合った。「最善を尽くしているだけです。あの子が、私の全てですから」

その気持ちは、よくわかった。

絵画教室がクリスマスの持ち寄りパーティーを開くと発表したとき、私は飾りつけ係に名乗り出た。裁判所の階段や残酷な非難へと心がさまよわないように、とにかく忙しくしていたかった。手を動かし続けていたかった。

「宮本先生!」私が天井から紙の七面鳥を吊るしていると、花子ちゃんがひじのあたりに現れた。「手伝ってもいい?」

「もちろんよ、花子ちゃん」私は電飾の紐の片端を彼女に手渡した。「私がもう片方をテープで留める間、これ持っててくれる?」

私たちは一緒に作業した。花子ちゃんが学校での出来事をぺちゃくちゃしゃべる間、私は壁に飾りを均等に配置することに集中しようと努めた。

「宮本先生? クリスマスは好き?」

「ええ、好きよ」

「今年は誰と過ごすの?」

私が飾り付けていたガーランドを持つ手が止まった。「たぶん、一人で」

「それは寂しいね」花子ちゃんの顔が心配そうにきゅっとしかめられた。それから、突然ひらめいたように表情が明るくなる。「うちに来ればいいよ! ね、お父さん?」

健二さんが備品の箱を持って近づいてきていたことに、私は気づかなかった。彼はあの優しい目で私を見て、そこには理解の色が浮かんでいた。

「もしよかったら」と彼は穏やかに言った。「喜んでお迎えしますよ。本当に」

断るべきだった。でも、また一人で祝日を過ごし、思い出と安物の酒に溺れることを考えると、喉の奥から何かが必死に這い上がってくるような気がした。

「本当に、いいんですか」と私はささやいた。

「いいどころじゃないですよ」と健二さんは言った。

そのクリスマス、私は健二さんの家の食卓に座り、隣の席では花子ちゃんが興奮してぴょんぴょん跳ねていた。

それから、花子ちゃんは私にさらに懐くようになった。

電話が鳴ったのは、水曜の夜十一時半。裁判所の部屋の悪夢から、私ははっと目を覚ました。

「宮本さん?」健二さんの声は、かろうじて抑えられたパニックで張り詰めていた。「こんな夜分に申し訳ありません。花子がすごく高い熱を出していて、あなたのことを呼び続けているんです」

「どこの病院ですか?」私はもうベッドから出て、机の上の鍵を掴んでいた。

「市立病院です。でも、来ていただく必要は……電話すべきじゃなかった――」

「すぐ行きます」

病院のベッドに横たわる花子ちゃんはとても小さく見えた。顔は熱で真っ赤に上気し、涙が頬を伝って枕に染み込んでいた。しかし、私がドアから入ってくるのを見ると、彼女は必死の思いで両手を伸ばした。

「宮本先生」と彼女は泣きじゃくってかすれた声で嗚咽した。

「大丈夫よ、花子」私は彼女のそばに駆け寄り、熱い小さな手を取った。もう片方の手で、湿った巻き毛を額から払ってやる。「もうここにいるから。大丈夫よ」

私は一晩中付き添った。かつて勇人に歌って聞かせたのと同じ子守唄を歌い、勇敢な少女や異世界への扉を描ける魔法の絵筆の物語を話して聞かせた。

夜明け近くに花子ちゃんの熱がようやく下がると、彼女は私の隣に寄り添い、「大好き、宮本先生」とささやいた。

「私も大好きよ、花子」

ベッドの向こう側で、健二さんが柔らかく、そしてどこか儚げな表情で私たちを見ていた。

正月の初めに雪が降った。花子ちゃんは教室の窓に顔を押し付け、興奮した息でガラスを曇らせた。

「雪で遊びに行ってもいい? お願い! 雪だるま、作ったことないの!」

私は健二さんに視線を送った。彼はまた早く迎えに来ていた。彼は肩をすくめ、年より若く見えるような笑顔を浮かべた。「いいんじゃないですか? 急いでませんし」

私たちはコートとマフラーに身を包み、子供のようにはしゃぎながら外へ飛び出した。健二さんが投げた雪玉が木の幹に当たって白い粉のシャワーとなって爆ぜると、花子ちゃんは甲高い笑い声を上げた。私は彼女が雪だるまの土台を作るために雪を転がすのを手伝った。濡れた手袋の中で指の感覚はなくなっていったが、心はなぜか、ありえないほど、この数ヶ月で一番軽くなっていた。

「宮本先生とお父さんで一緒に作ればいいよ!」花子ちゃんは小さな指揮者のような権威で宣言した。「私は赤ちゃんの雪だるまを一人で作るから!」

それで、健二さんと私は並んで作業をした。雪を丸い形に固めるうちに互いの手が触れ合い、私たちの吐く息は冷たい空気の中で混じり合った。彼はとても近くにいて、彼の香りがし、目元の笑い皺や黒髪に積もる雪の結晶が見えるほどだった。

「宮本先生が私のお母さんになってくれたら」と花子ちゃんが突然言った。その声が、静かなひとときを切り裂いた。「それって完璧なのに」

私たちは二人とも、完全に凍りついた。

「花子」健二さんの声はこわばっていた。「そういうことを、いきなり言うもんじゃない」

「わかった。でも、本気だよ」花子ちゃんはあの真剣な目で私を見た。「宮本先生のこと、本当に好きなんだもん」

視界がぼやけ、自分が泣いていることに気づいた。涙が凍った頬に熱く伝う。私は雪の中にひざまずき、彼女を抱きしめた。この小さな女の子は、私がどれほど壊れていたかを知りもしないのに、いつの間にか私を一つ一つ元通りにしてくれていた。

「私もあなたのことが好きよ」と私は彼女の髪に顔をうずめてささやいた。「とっても、とっても、大好きよ」

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