第4章

ルル・サンダースは顔を覆い、ぼろぼろと涙をこぼした。

その丹念に作り上げられた哀れな表情は、今となってはひどく滑稽に見える。

「ど、どうしてこんな酷いことを……?」

彼女は嗚咽を漏らしながら数歩後ずさった。

「ただ、謝りたかっただけなのに……」

第一王女であるエリザベスお姉さまは、苛立たしげに手を振った。

「もういいわ。そんな芝居はやめなさいな。あなたが自分からアリスの手にぶつかってきたって、わたくしが証言してさしあげるから」

私はエリザベスお姉さまに感謝の視線を送った。

「ありがとうございます、お姉様」

ルル・サンダースは今日が自分の思い通りにならない日だとようやく悟ったのだろう、悔しげに唇を噛み締めると、身を翻して走り去った。

その背中は、確かに見る者によっては哀れに映るかもしれない。彼女の腹の内を知らなければ、私も本当に騙されてしまったことだろう。

馬車が再びゆるゆると進み始めると、エリザベスお姉さまは馬上のエイプリルを興味深そうに眺めた。その眼差しには、まるで品定めでもするかのような色が混じっている。

「これが父上があなたにつけた新しい騎士? なかなかいいじゃない。わたくしのジョンより、よほどしっかりしてそうね」

エリザベスお姉さまは片眉をくいっと上げた。

「ジョン・グレイったら、いつも仏頂面で、人を寄せ付けないって感じなのよ。でも……」

彼女は声を潜め、悪戯っぽく唇の端をつり上げた。

「知ってる? わたくし、彼が剣の稽古で上着を脱いだところ、こっそり見たことがあるの」

「お姉様!」

私は驚いたふりをしたが、思わず笑い声が漏れてしまった。

「あら、興味ない?」

エリザベスお姉さまは悪戯っぽくウィンクする。

私たちは道中ずっと笑い合い、馬車の中はとても和やかな空気に満ちていた。

その夜、私はエリザベスお姉さまと共に離宮の庭園を散策していた。月光の下、黄金で彫刻された噴水がまばゆい光を放ち、精緻な彫像の間から銀色の水しぶきが飛び散っている。

「本当に綺麗……」

私はその噴水に見惚れながら、ふと真剣な顔で呟いた。

「ねえ、お姉様。この噴水、丸ごと解体して持ち帰るのと、粉々にして持ち帰るの、どっちがいいと思う?」

エリザベスお姉さまは私の突拍子もない問いに言葉を失い、まるで狂人でも見るかのように目を丸くして、ただ私を見つめるだけだった。

数日後、私はソランド学院に来ていた。学院の執事が、近々新しい教授が着任するという重要な知らせを告げに来たのだ。

「新任の教授はソランデ公国のアレクサンダー家のご出身で、学識が深く、剣術と馬術にも精通しておられます」

執事は畏敬の念を込めて言った。

「身分も高く、王室や貴族の子弟たちを抑えることができるお方です。若くして名を成した才子で、ご容姿も大変端麗で……」

私はその説明を上の空で聞きながら、頭の中では原作におけるナラ・アレクサンダーの描写を思い出していた。性格は冷淡で、滅多に笑わず、罰は容赦ない。

この未来の先生は、どうやら一筋縄ではいかない人物のようだ。

「まっすぐ立て! 動くな!」

私とマーカス・クレモントは、教室の外の廊下に立たされていた。

原因は単純明快――喧嘩したからだ。

より正確に言えば、マーカスが私を「ルルをいじめた」と非難し、それに腹を立てた私が彼を殴ったのだ。

「全部お前のせいだぞ、このじゃじゃ馬が!」

マーカスは憎々しげに言い放った。目の周りには、まだ青い痣がくっきりと残っている。

「もう一度言ってみなさいよ?」

私は冷たく笑いながら、こきりと拳を鳴らした。

「次はあんたの大好きなルルも、まとめて殴ってあげるから」

マーカス・クレモント。クレモント伯爵家の跡継ぎで、銀月市では名の知れた放蕩息子だ。父親はクレモント伯爵、母親はヘレナ妃――私の父上の実の姉にあたる。

道理で言えば彼は私の従兄にあたるのだが、私たちの仲はこれまで一度たりとも良かった試しがない。

原作では、彼はルルの忠実な擁護者で、いつも意地悪くアリスを当てこすっていた。

「やれるもんならやってみろ!」

マーカスは顔を真っ赤にして怒鳴った。

「この誰にも好かれてない――」

バサッ!

突然、一冊の分厚い古書が教室から飛んできて、私たちのちょうど真ん中の床に叩きつけられた。

「黙れ」

氷のように冷ややかな男の声が、教室内から響いた。

「次に騒いだら、その本はお前たちの頭の上に落ちると思え」

私とマーカスはすぐさま口を噤み、凍りついたようにおとなしく直立した。

どうやら、かの有名なナラ・アレクサンダー教授は、すでにご着任のようだ。

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