第9章

バーの外の空気には、ほのかなアルコールの匂いが漂っていた。私は深呼吸をして、どうにか気持ちを落ち着かせようと試みる。

藤原健一の眼差しは私を凍えさせ、無事に逃げ出せたというのに、今なお恐怖が後を引いていた。

その時、見慣れた人影が街角に現れた。

宮本利だ。

彼は心配そうな顔で、足早にこちらへ向かってくる。

「大丈夫か? 殴られたりしてないか?」

彼は焦ったように私を隅々まで見つめ、そっと両手で私の顔を包み込み、念入りに確かめた。

私は首を横に振る。

「大丈夫。ただ、ちょっと怖かっただけ」

宮本利は何も言わず、私を腕の中に引き寄せ、強く抱きしめた。

彼の腕...

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