第165章 謝罪は絶対にありえない

夜になっても、若林詩羽は結局、謝りに行かなかった。

鳴海絃星の、あの勝ち誇った顔を思い出すたび、胸の奥に沈めたはずの屈辱が毒みたいにじわじわ広がって、臓腑の隅々まで腐らせていく。

詩羽は拳を握りしめた。爪が掌の肉に食い込み、痛みで指先が小さく震える。

――でも、行かなければ若林家は終わる。

長い逡巡の末、彼女は賭けに出ることにした。

スマホを取り出し、千峰毅宏の番号を開いて発信する。

コールが何度も鳴る。出ない。

もう一度かける。やはり出ない。

若林詩羽はスマホを握りしめたまま、指の節が白くなる。胸の中の一本の糸が、きりきりと締まっていく。

見ていないわけがない。――出たく...

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