第29章 彼の気遣い

八幡誠言は鳴海絃星の前まで歩み寄ると、冷たい視線で彼女を一瞥した。

「こんな夜更けに、また何を騒いでる」

八幡誠言が事情も聞かずに頭ごなしに責めてくるのを見て、鳴海絃星は鼻で笑う。

「八幡誠言。あなたっていつもそう。何があったかも確かめないで、口を開けば私のせい」

「俺が間違ってるか? お前が戻ってきてから、この家が静かだったことがあるか」

鳴海絃星は言いかけて、ふっと視線を逸らす。

「もういい。偏見だらけの人に話したって無駄」

「どういう意味だ」

八幡誠言が乱暴に彼女の手首を掴む。

「はっきり言え」

鳴海絃星は勢いよく振りほどいた。

「分かった。じゃあ言うわ。六年前、...

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