第7章 返してあげる

久しく見ていなかったその顔を前に、鳴海絃星の身体はぶるぶると激しく震えた。唇がしばらく戦慄いたあと、ようやく喉の奥から掠れた声が絞り出される。

「……お父さん……」

鳴海厚年は、絃星をじっと見つめた。

薄い上着は乱れ、顔色は青白い。いまにも砕けてしまいそうな、頼りない脆さ。

胸の奥が、言葉にできないほど痛んだ。

彼は車のドアを開けて降りると、仕立てのいいスーツの上着を脱ぎ、氷のように冷えた娘の肩へそっと掛ける。

父の匂いが残る布が落ちた、その瞬間。

絃星の中で張り詰めていた最後の糸が、ぱちんと音を立てて切れた。

もう支えきれない。

彼女は前へ崩れ込むように飛びつき、父の厚い...

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