第11章 手伝って

心不全の進行は桜井昭子が想像していたよりも速かった。最近、精神を集中させるのがますます難しくなっていると感じる。時には、ソファに座ったまま、いつの間にか眠り込んでしまうこともあった。

ポケットの中でスマートフォンが震えた。桜井昭子はまた小林淮人からだと思った。入札の日が日に日に近づいている。彼女の美月ちゃんが自分のせいで傷つくことのないよう、なんとかして小林淮人を排除しなければならない。

しかし、表示された発信者はバーのママだった。桜井昭子は困惑した。もう辞めたはずなのに。

今更、自分に何の用だろうか?

電話に出るとすぐ、ママが焦ったようにまくし立てた。「昭子ちゃん、お店に戻ってきてく...

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